説教「将来と希望を与える計画」

2019年5月12日 主日礼拝
聖書箇所:エレミヤ29:8~14
説教:深谷春男牧師

以前、東京聖書学校の夏期キャラバンで、岡山県の玉野教会に伺いましたが、その年の聖句は、実はこの朝の聖書箇所、エレミヤ29章11節でした。その時この聖書からの説教を考えていましたので、不思議な神様の導きを覚えたことでした。この聖句には不思議な力があります。

 

「わたしがあなたがたに対していだいている計画はわたしが知っている。それは災を与えようというのではなく、平安を与えようとするものであり、あなたがたに将来を与え、希望を与えようとするものである。」(11節)

ここには「神の計画」という主題が記されます。この言葉はとても深い内容を持ち、神の福音の本質とわたしたちの人生の転機を促す言葉と思います。

 

【聖書箇所の概説】

今日は、皆さんと共に、エレミヤの言葉を読んでいます。エレミヤという人物は、聖書の中ではとても重要な人物です。彼は「真実の預言者」、「涙の預言者」とも呼ばれ、「真実」ということを大切にしました。そして彼は、イスラエルの歴史にとって一番の暗黒時代、「バビロン捕囚」の時代を生き、人々に真実の信仰を指し示した預言者です。エレミヤは、イスラエルの民のかたくなさゆえに、選民失格として、国を失う悲しみの中で、涙を流し続ける預言者でした。レンブラントの描いた「エルサレムの崩壊を嘆くエレミヤ」やミケランジェロの「エレミヤ」はいずれも深い嘆きの預言者の像となっています。しかし、その、歴史の炉で練られ、真実に神により頼むところから新しい世界、「神の歴史経綸の世界」が明らかにされてゆきます。それが31:31にある「新しい契約」です。

エレミヤ書29章には、エレミヤの驚くべきメッセージがあります。これは、バビロンで捕囚になっている人々へ書かれたエレミヤの手紙です。イスラエルは紀元前597年にバビロニアに国を占領され、主だった人々は捕囚として首都バビロンに連行されました。王や貴族、祭司、軍人、技術者等1万人が捕囚になったと列王記下24章は伝えています。捕囚から4年たった前594年頃にこの手紙は書かれたと言われています。この箇所の内容を学ぶときのキーワードは「神の計画」という言葉だと思います。

 【メッセージのポイント】

1)8 万軍の主、イスラエルの神はこう言われる、あなたがたのうちにいる預言者と占い師に惑わされてはならない。また彼らの見る夢に聞き従ってはならない。9 それは、彼らがわたしの名によってあなたがたに偽りを預言しているからである。わたしが彼らをつかわしたのではないと主は言われる。10 主はこう言われる、バビロンで七十年が満ちるならば、わたしはあなたがたを顧み、わたしの約束を果し、あなたがたをこの所に導き帰る。(8-10節)

⇒ 偽りの預言にだまされてはならない!

まず、偽りの預言者にだまされるな!というこの言葉から考えてみたいと思います。これは別の言葉で言えば、「神の歴史計画」を誤って考えてはならないというメッセージです。神様の御心に沿った「神の計画」を知らないと、とんでもない破局を招くというのです。

当時、捕囚をめぐってはいろいろな考えがありました。そしていろんな考えを持つ「預言者」と言われる人々が活動しておりました。故国エレサレムにおいては、バビロニアの支配から逃れるためにエジプトに頼って国を救おうという運動も活発化していました。エレミヤは、このような偽預言者にだまされるな!と語ります。捕囚地バビロンでは、早期に帰還できるのではないかという楽観論も出ておりました。イスラエルの民の前途に希望はないという悲観論も出ておりました。この人々にエレミヤは手紙を書きました。

今日読みました聖書の少し前、5-6節にはこのように記しています。「家を建てて住み、園に果樹を植えてその実を食べなさい。 妻をめとり、息子、娘をもうけ、息子には嫁をとり、娘は嫁がせて、息子、娘を産ませるように。そちらで人口を増やし、減らしてはならない」。つまり、捕囚は簡単には終わらない。それは、イスラエルの民への訓練であり、あなた方の背きの罪を悔い改めるべく、主が与えた訓練の鞭です。それは2年や3年で終らず、70年続く。だから、捕らわれていったバビロンの地で、あなた方は家を建て、園に果樹を植えて自立できるようにしなさい。また、帰還はあなた方の子や孫の時代になるから、妻をめとり、子を生み、その子たちにも子を生ませ、民を増やして帰還に備えるように」と、この手紙は語ります。

しかし、これは、当時の人たちにとっては、慰めになりませんでした。70年もの間!そんなに長く、捕囚となったら、自分は異国で死んでしまうではないか!結局、捕囚民はエレミヤの預言を無視し、祖国に残った人たちと手を組んで、バビロニアに反乱を起こし、その結果、紀元前586年にはエレサレムの町は再度占領され、壮麗な神殿は壊され、イスラエルの民は実質、崩壊の破局を迎えることになるのです。捕囚民が帰還を許されたのはバビロニアが滅び、ペルシャの賢王キュロスの勅令、紀元前538年を待たねばなりませんでした。これは、最初の捕囚から60年後のことでした。

2)11 主は言われる、わたしがあなたがたに対していだいている計画はわたしが知っている。それは災を与えようというのではなく、平安を与えようとするものであり、あなたがたに将来を与え希望を与えようとするものである。

⇒ 平安、将来、希望を与える神の計画!            (11節)

今日の説教はこの11節が中心です。ここから説教題も取りました。ここには大切な言葉が、慰めに満ちて3つ語られます。

第一は「わたしの計画は、災いを与えるのではなく平安を与える計画」という言葉。

第二は「将来を与える」、未来を与えるという言葉です。

そして第三は「希望を与える」という言葉です。

改めて考えてみると、信仰とは「神様との人格的な交わり」であり、「神様の計画」を知ることではないでしょうか?神様を信じることは、神様への「全幅の信頼」であり、それは神様の「計画を知る」ことなのだと思います。

エペソ人への手紙などは、実に、この「神様の奥義に満ちた計画」を知るようにと語ります。

神さまの計画は、「平和の計画」であると言います。なんという恵み!

神様は「計画」を持っておられます。それは、小さく言えば、わたしたち個人々々の人生に不思議な恵みに満ちた計画を持っておられますし、イスラエル民族にとっても、更に、全人類にとっても「不思議な恵みに満ちた計画」を持っておられます。

それは、教会の歴史の中では、「恵みの御計画」とか、「恩寵の御経綸」とか「不可思議なる御摂理」とか呼ばれてきました。そもそも「計画」という言葉は不思議な響きを持っていると思います。計画は、一つのことを指すのではなく、いくつかの場面を併せ持つ言葉ではないでしょうか?たとえば「旅行の計画」を立てる時には、あそこに行って、あそこに行ってそれから、次はあそこに行くとか、重要なスポットを複数考えて立案します。京都旅行の計画なら、知恩院に行って、同志社に寄って、金閣寺にも寄って、琵琶湖にも寄って・・。とか、とにかく「計画」には主題になるポイントがあります。

聖書の中には、神様の「恵みの計画」、重要な出来事が記されています。

①神の愛による天地創造と人間の創造。 創世記1章

②人間の堕罪と、罪と死に支配された人間の歴史。 創世記3~11章

③呪いの世界を祝福に変える先祖アブラハムの選びと召命。  創世記12章

④奴隷の地エジプトからの脱出とシナイ山での十戒の授与と契約。出エジ3~24章

⑤ダビデによる王国の制定。ダビデ契約。     ヨシュア1~サムエル記下7章

⑥王国の分裂と、選民失格としてのバビロン捕囚。  列王記上12~列王記下25章

⑦究極の救いの啓示。イザヤ53章の苦難のメシヤの代贖。   イザヤ53章

⑧救い主の誕生。クリスマス。メシヤの受肉。     ルカ2章、ヨハネ1章

⑨キリストによる十字架と復活による罪と死からの解放。  四福音書。ロマ8:2

⑩聖霊なる神の降臨と、救いの確信、力の付与。    使徒2章 ロマ8章

⑪全民族への福音の宣教と、世界的リバイバル。    ルカ24:45~49

⑫救いの完成としての主イエスの再臨と永遠の世界の到来。マタイ24章 黙示21,22

聖書全体の語る神の歴史経綸の中を、感謝と喜びを持って歩み行く者とならせて頂きましょう。エレミヤ29章11節の聖句は、「神の平和の計画」を語り、わたしどもの生涯に、確実な将来と希望を与える祝福の聖句です。

3)12 その時、あなたがたはわたしに呼ばわり、来て、わたしに祈る。わたしはあなたがたの祈を聞く。13 あなたがたはわたしを尋ね求めて、わたしに会う。もしあなたがたが一心にわたしを尋ね求めるならば、14 わたしはあなたがたに会うと主は言われる。わたしはあなたがたの繁栄を回復し、あなたがたを万国から、すべてわたしがあなたがたを追いやった所から集め、かつ、わたしがあなたがたを捕われ離れさせたそのもとの所に、あなたがたを導き帰ろうと主は言われる。

⇒ わたしはあなたの祈りを聞き、わたしはあなたに会う!

神様はわたしどもを深く深くご存じで、わたしたちを愛しておられます。神様は深い人類への愛と平安の計画を持っておられます。それなのに、地上にいるわたしたちは、その広大な計画が分からずに、目の前の一つ一つで一喜一憂し、時には失望に落ちてしまう。しかしこの12,13,14節で神様は、熱情を持って、語っておられます。

あなたがたが私のもとに礼拝に来て、祈るなら、わたしはその祈りを聞く!

あなたがたは、わたしを尋ね求めるならば、わたしは会う。一心に求めるならわたしはあなたと会う!(「会う」は2回繰り返される。)

そして、わたしはあなたがたの繁栄を回復し、捕囚で全世界に散らばったけれどもそこから集め、もとの所に導きかえる!

【祈り】 主よ。今日は預言者エレミヤの「将来と希望を与える計画」を聞きました。霊の目を開き、あなたの人類や個人への計画を知らしめ、将来と希望に生きる者とならせてください。日本は、この5月で元号も「平成」が終わり、「令和」の時となりました。日本の報道なども少し行き過ぎがあるように思いますが、右傾化の時代、国際的な緊張も大きな時代となってきましたが、日本の歩むべき道も導いてください。自然災害からも守って下さい。何よりも、わたしたちの霊の目を開き、あなた御自身の救いの計画、御摂理の恩寵を、熱意を持って求める者としてください。御顔を仰ぎつつ、御臨在の中を歩ませて下さい。主の御名によって祈ります。アーメン