説教「パウロの福音紹介」ロマ書連続講解② ローマ1:2,3 深谷牧師

2021年4月18日(日)復活節第三主日礼拝
聖書箇所:ロマ1:2,3
説教者:深谷春男牧師

 物事を、他者に紹介したり、説明するのは、なかなか難しいものですね。特に文化の違いや伝統の違い言葉の壁があったりするとそれは特に難しくなったりします。

 ある宣教師が栃木県で路傍説教をしていたことがあるそうですが、聞いていた方々はとても不思議に感じたそうです。この宣教師はたどたどしい日本語で「お嫁下さい、お嫁下さい」とか言っておられたそうです。それから「妻を捨てなさい、妻を捨てなさい」という。独身生活を勧めておられるのかと思ったら、続いて「ネズミもらいなさい、ネズミもらいなさい」と言われたので、皆さんも何か変だと思ったというのです。

 彼の言いたかったのは「どーぞ、トラクト、お読みください」、「罪を捨てなさい」そして「恵みをもらって歩んでください」という意味だったというのです。

 村上宣道先生の説教で、ヨハネ福音書から宣教師が一生懸命福音を語られた。「ニコデモ~、ニコデモ~。」と主イエス様の話。初めて聞いたおじいちゃんは「今日の話では、ネコでも新しく生まれ変わらねばならない!という話がだったよ」と家族に語ったとの事でした。(一生懸命御用された宣教師先生の話をジョークで話してすみません。)

 皆さんは、もしも、わたしたちの信じている聖書の中心的な内容である「福音」について紹介するとしたらどのように説明されますか?

【 今日の聖書箇所の概略及び構造 】

今回は、2節、3節を中心に、パウロの語る「福音」に注目してみたいと思います。そして、今日の1~3節の内容をよく見てまいりましょう。

 1 キリスト・イエスの僕、神の福音のために選び別たれ、召されて使徒となったパウロから、――  2 この福音は、神が、預言者たちにより、聖書の中であらかじめ約束されたものであって、3 御子に関するものである。(1~3節a)

 

     パウロは1節で「キリスト・イエスの僕、神の福音のために選び別たれ、召されて使徒となったパウロから、――」と書いて、7節の「―― ローマにいる、神に愛され、召された聖徒一同へ」と続けています。しかし、途中で「神の福音のために」という言葉が出てきたので、彼はどうしても福音の内容を簡単にでも紹介する必要を感じました。それで、ここに、パウロの簡潔な「福音紹介」がなされることになりました。

 【メッセージのポイント】

1)キリスト・イエスの僕、神の福音のために選び別たれ、召されて使徒となったパウロから、――  (1節)

  ⇒「福音」という言葉の本来の意味。

  「福音」という言葉は、ギリシャ語では エウアンゲリオン」という言葉です。内容としては「良き知らせ(グッド・ニュース)」の意味です。それは、もともと戦場からの勝利の通知、「我が国は敵国に勝利したぞ!」という通知が、エウアンゲリオンという言葉でした。現代風に言えば、「癌が癒される新薬の発見」とか、「大学入試の合格通知」などは、典型的なこの世的福音(グッド・ニュース)であるということができると思います。最近のニュースで言うなら、「新型コロナ・ウィルスのワクチン摂取が日本でも始まりました!」と言うような内容です。 

 旧約聖書ではイザヤ書52:7,61:1等で使用される「神の救済の宣言」(メバセル・トーブ)として用いられています。新約では福音書で主イエスによる救済の恵み(ルカ4:18等)という意味で、書簡ではイエスキリストの生、死、復活の恵みを福音と呼んで使用されています。聖書は、人間の最も大切なものは、罪の赦しと永遠の命であると至る所で語っています。これこそが究極的な、人間を根本から生かす「神の福音」であると語っています。

 

2)2この福音は、神が、預言者たちにより、聖書の中であらかじめ約

束されたものであって、            (2節)

  ⇒「福音」は、旧約の約束の成就。            

  福音は、突然現れたのではありません。新約の主イエス・キリストの福音は、長い間、旧約聖書で語られてきました、神の約束の成就なのです。それは新約聖書全体で語っている内容です。

 小林和夫師の指摘によると主イエスの説教のアウトラインは(マルコ1:15等)「時は満ちた、神の国は近づいた。悔い改めて福音を信ぜよ」に現れます。ここには、明確な三つのポイントがあります。

 

  • 旧約聖書で預言されていた神の国が来た
  • 主イエスの到来がその約束の成就である。
  • 悔い改めて、この福音を信じなさい。

 

また、使徒たちの説教のアウトラインも使徒2,3章を見ると

  • 旧約聖書で預言されていた神の国が来ている
  • それは、主イエスの十字架と復活である。
  • 主イエスキリストにあって、悔い改めて福音を信じなさい。

という内容なります。

 

ここで強調されるのは、イエス様の福音は、急に出てきたものではなく、パウロが考えたのでもなく、「旧約聖書で、あらかじめ神様が、預言者たちを通して約束されたものという内容です。

 さて、もう一つの問いは、旧約聖書の中で、「神が、あらかじめ預言者を通して約束されているもの」というのはどこの箇所でしょうか?

 わたしが旧約聖書の中で、主イエスの福音が約束されているところという言葉ですぐに思い浮かべたのは、

イザヤ書53章の「苦難の僕」、

次いでエレミヤ書31:31~34「新しい契約」,

更にサムエル上7章「ダビデ契約」などでした。

 そしてそれから、さらに迫ってきたのは、

創世記22章の「イサク奉献」、

創世記3:15の蛇の頭を砕く女の子孫、「彼は蛇の頭を砕き、蛇は彼のかかとを砕く」というproto-evangelium、

それから出エジプト記12:23「門とかもいに塗られた小羊の血」,

「十字架の上で叫ばれた、主イエスのエリエリ・レマ・サバクタニ」の詩篇22篇や、69篇の「苦難の僕」、

箴言8章「世界の初めに造られた神の知恵」など、など・・・。

 罪と死の支配の中で苦しむ人間への決定的な救済は、われらの根本的な破れを贖う神ご自身の到来なくしてはあり得ない。ヨブ記19:25「われを贖う者は生きておられる!」。先週の祈祷会の詩篇78:42節。「彼らは、神の力も、贖われた日も思い起こさなかった!」。贖いの主の到来!内村鑑三によれば、旧約の中心はヨブ19:25.新約の中心はロマ3:25。ハレルヤ

 

3)御子に関するものである。(3節)  

 ⇒「福音」はイエスキリストに関するものである。

  ここでパウロは、「福音」とは、「御子に関するもの」であると語っています。聖書の語る救いと勝利のメッセージは圧倒的に、この神のみ子、イエスキリストに関っています。

 カルヴァンはこの聖句を註解して「これは比類なく美わしい一句である。これによって『全福音がキリストのうちに含まれる』と我々は教えられるのである。」と語ります。この神の御子なるお方が、受肉され、わたしたちの身代わりとなって十字架にかかり、死を打ち砕いて復活してくださり、救いを成就してくださった。そして、やがて、世の終わりに再び来たりたもう。聖書の語る「福音」は「キリスト集中型」である。

 

ロマ書16章の示す《福音内容の描写》は以下の通りです。

「全ての人間は、アダム以来の罪の支配の中にあって、苦しみ、悩みの中にある。文明の先端にあるようなギリシャ人も、律法を行うことによって救われると信じているユダヤ人も、未開に住む人も、すべて、罪と死の支配の中にあり、神の怒りのもとにある。(1:18~3:20)

 しかし、今や、神は旧約聖書で預言していた通り、救い主を送ってくださった。このお方はイエス・キリストである。もしも、主イエスの十字架と復活の福音を信じて受け入れるなら、その信仰によって義とせられ、聖霊を与えられ、罪と死の法則から解放される。人はこの信仰によって、神の一方的恩寵によって救われ神の子となる。(3:21~8章)。

 神は福音を拒んでいる現在のイスラエルの民(ユダヤ人)をも、導いてくださり、やがて全人類が神の摂理のもとに救われる。(9章~11章)

 クリスチャンはいつも聖霊に満たされ、教会生活を送り、信仰と希望と愛の中に証しの歩みをする。世の終わりに至るまで、再臨の主イエスにお会いするまで信仰生涯を全うする。そして、神に栄光が帰せられる!」(12~15章)

 ラジオ牧師の、榊原寛先生の救いの証しを読みました。「こころをいやす神さま」というタイトル。

 中学生から高校生のころに、ノイローゼになり、何のために生きていくのかわからない。閉じこもりになり、母や友さえ恨むような日々でした。ところが、イエの隣に教会ができた。讃美歌が聞こえてくる。讃美歌にひかれて教会に行ってみた。わからないことだらけだった。あるときに考えた。「わたしが幸せになっても、ならなくても、わたしの病気が治っても直らなくても、もし、本当に神様がいるなら信じなければならない」と思って教会に通い始めた。先生に教えられて、食事の前や、一日の終わりに感謝の祈りをするようになった。すると、子供のころからの罪が思い出され、中でも友達が見舞いに来てくださったのに「誰もかれも病気になって死んでしまえばいいんだ」と思っていた醜い自分の心に気づき、神様のばつを受けなければならないと思った。その時、イエス様の十字架の意味が分かった。この神様がいるなら生きて行ける!そうして神様を信じて歩んでいるうちに、ノイローゼも癒され、やがて、神学校に行って、牧師になって、今も喜んで生きています。

 主イエスを信じ受け入れ、「受肉」「十字架」「復活」「再臨」の内容を深く理解して揺るがない信仰の生涯へと整えていただこう。ハレルヤ!

【祈祷】 父なる御神。今日は、使徒パウロの語る「福音の本質」を示してくださり感謝します。旧新約聖書に示された主イエスの十字架と復活の福音を聖霊様の助けによって理解し、信じ受け入れ、神の子としての救いと喜びを体験なさせてください。御名によって。アーメン