聖霊降臨節第十六主日礼拝説教「一筋の心を与え給え」詩篇86篇 深谷春男牧師

2021年9月5日(日)主日礼拝
聖書箇所:詩篇86篇

説教者:深谷春男牧師

9月に入りました。昔は9月の第一主日は「振起日礼拝」と呼ばれておりました。暑い夏も峠を越して、秋が忍び寄る9月の初め、暑さで弱さを覚えていた身体と心を、礼拝を通し、み言葉を通して、新規一転、心を奮い起こす日として、振起日と呼んでおりましたね。詩篇86篇はすばらしい詩篇です。今日はこの詩篇を通して、「聖書の御言葉を暗唱」しながら、勝利した歩みを学びたい。「御言葉にはあなたがたの魂を救う力がある」(ヤコブ書1:21)。 

【 詩篇第86篇の概略と区分 】 

 友人の高橋和人牧師が2014年12月の教団新報に、わたしの愛誦句は詩篇86篇ですというのが書いてあり、とても印象に残りました。これを読んだときには「え?詩篇86篇なんて、そんな愛唱と言われるような詩篇かな?」と感じておりました。その時には、詩篇86篇の良さが分からなかったのです。実際に、東京聖書学校の朝毎の早天祈祷会で、この詩篇を丁寧に読んでみた時に、この詩編の切々たる熱い思いがそのまま伝わってくる感じがして、びっくりしました。詩篇86篇には、時代背景をうかがわせる言葉などはありません。ただ、「ダビデの祈」とだけ記されます。彼の周りには傲慢な者たちがたくさんいて、ダビデを苦しめ、暴虐な者たちは彼の命を窺っていました(14節)。サウルに追われて放浪する「ダビデの祈り」と理解して表題にしたという学者もおります。人生における困難は、人の心を神に向けさせます。ダビデは四方八方が厳しい困難に囲まれるほど、空いている天を見上げ、神様の憐れみのみに寄り添いました。特に11節には、新共同訳では「御名を畏れ敬うことができるように、一筋の心をわたしに与えて下さい」と翻訳され、「一筋の心」が強調されました。ダビデのように信仰一筋、神第一の信仰者として、わたしどもも神様の方に思いを向けて歩み始めたいと思います。

 この詩篇の特徴的なところを書き出したら、以下の10項目が並びました。( )はへブライ語。

  1. 「実に(キー)」が多い。9回使用。(1,2,3,4,5,7,10,13,17節)。
  2. 「あなた(アッター)」が5回(2,5,10,10,15,17)
  3. 「わが魂(ナフシー)」が5回(2,(4),4、13,13)
  4. 「わが心(レビー)」2回(11,12)
  5. 「慈しみ(へセド)」4回(2,5,13,15)
  6. 「すべて(コール)」が4回(3,5,9,12)
  7. 「あなたという語尾(・・カー)」等 23回 名詞と動詞 (1,2,2,4,4,・・・)
  8. 「わたしという語尾 (・・イー)」等 35回 名詞と動詞 (1,1,1,2,2,2、3,3,・・・)
  9. あなたは「わたしの主」というような神様への切実な語りかけ多し。

「主(YHWH)」4回(1,6,11,17)

「わが主(アドナイ)」7回(3,4,5,8,9,12,15)

「わたしの神(エロハイ)」2回(2,12)

  1. 「あなたの僕(アブデッカー)」3回(2,4、16)                  

これらの用語の頻度から言えることは、過激なほどの愛と信仰の詩篇と言うことができます。凝縮すれば以下のような詩篇となります。

「主よ、耳を傾けてください。われに答え給え。実に、われは貧しい者!

わが魂を守ってください。わたしはあなたを信じ、あなたに贖われた者まことに僕を救い、あわれんで下さい。じつに一日中祈っています。

わが魂に喜びを。じつにわたしは、仰瞻する以外、助けがありません。

わたしは今、敵に囲まれ、命を狙われています。

このままでは生きて行くことができません。

主、あなたはわたしの神です、あなたはわが心のすべてです。

あなたの慈しみとあなたの真実に、わたしは存在の全てをかけています。

このわたしの頼りとする者は、主よ、ただあなたのみです。

あなた以外に真実な神はありません。ただあなたを仰ぎます。

わたしに、一筋の心を与えたまえ!

まことに、まことに、主よ、主よ・・」アーメン!アーメン!

 

【メッセージのポイント】           

1)ダビデの祈

 1 主よ、あなたの耳を傾けて、わたしにお答えください。

わたしは苦しみかつ乏しいからです。

 2 わたしのいのちをお守りください。

わたしは神を敬う者だからです。

あなたに信頼するあなたのしもべをお救いください。

あなたはわたしの神です。 

 ⇒わたしは「あなたの慈しみに生きる者」!

この詩篇は、「ダビデの祈」と表題があります。しかも、切なる祈りです。冒頭から「主よ、耳を傾けてください、わたしに答えてください。わたしの命を守って下さい。あなたの僕をお救い下さい。あなたはわたしの神です!」まさに、ダビデの祈りは、神に向かう叫び、切なる嘆願、救いを求める緊急電話のようです。

この詩篇の特徴は、「~して下さい」「~したまえ」という、祈願命令が多いことです。数えてみましたら、15回も繰り返されます。

1節 あなたの耳を傾け給え。

1節 われに答え給え。     「じつに、わたしは貧しいから」

2節 わが魂を守り給え、    「じつに、わたしは神を敬う者だから」

2節 あなたの僕を救い給え。 

3節 われを憐れみ給え。 「じつに、わたしは一日中あなたを呼ぶから」

4節 あなたの僕の魂を喜ばせ給え「じつに、わが魂はあなたを仰瞻する」

6節 耳を傾け給え。

6節 わが嘆願の声を良く聴き給え

        7節「じつに、あなたはわたしに答えられるから」

        10節「じつに、あなたは大いなる神」

11節 あなたの道をわれに教え給え。

11節 わが心を1つになし給え。

        13節「じつに、あなたのいつくしみは大きいから」

16節 わが方を向き給え

16節 われを憐れみ給え

16節 あなたの力を与え給え

16節 あなたのはしための子を救い給え

17節 幸運のしるしをわれに行い給え。

      17節「じつに、あなたは主、われを助け、われを慰めたから」

特にここでは、2節に、わたしは「あなたの慈しみに生きる者(ハシード)」という言葉があります。この言葉は、神の契約に生きる者の深い神への信頼と愛情を表現している言葉です。これは新約聖書の「クリスチャン」という言葉と同じような内容を見ることができる言葉です。口語訳は「神を敬う者」と訳していますが、「あなたの慈しみに生きる者」という新共同訳の方が、「いつくしみ」(=へセド)と言う言葉を使うのでリアルに響きます。神の「驚くべき愛で贖われた者!」と、自分を呼べたらすばらしいですね。

 

3)7 わたしの悩みの日にわたしはあなたに呼ばわります。

あなたはわたしに答えられるからです。

 ⇒ 悩みの日に、あなたに呼ばわる!あなたは答えたもう。この箇所の聖句は、聖書中で繰り返し宣言されている有名な聖句です。

「悩みの日に我を呼べ。われ汝に答えん。しかして、汝、われを崇むべし」(詩篇50:15)などは、まさにここで詩篇86編のこの箇所と同じ内容ですね。

 わたしも1971年のころ、21歳。悩み多き青年期に、70年6月の日米安保条約を巡る教会内の対立や、教団全体を含めた混乱期に信仰を失い、赤羽に導かれ、10月に赤羽教会でもう一度信仰生活を立て直して、献身を決意したその頃に、友人の瀬川兄が、神谷のアパートに訪ねてきて、朝まで、信仰の生涯について話をしたときのことを思い出します。瀬川君も信仰の決意をし、帰るときに、彼に聖書をプレゼントしました。その聖書の後ろのページに、「悩みの日に我を呼べ。われ汝に答えん。しかして、汝われを崇めん」の聖句を書いたのが昨日のように思い起こされますね。彼もその後、三崎町教会で洗礼を受けてクリスチャン生涯を歩み始めました。

 天地を造られた神は主以外ありませんし、わたしたちの罪を十字架にかかってまで贖い、死を経験される神はおられません。死を打ち砕き復活される神はおられません。


3)11 主よ、あなたの道をわたしに教えてください。

わたしはあなたの真理に歩みます。

心をひとつにしてみ名を恐れさせてください。

⇒ 一筋の心を与え給え!

11節に「御名を畏れ敬うことが出来るように、一筋の心をお与えください」との祈りの1節。この11節は他の聖書箇所からの引用では無くこの詩篇独特の1節と言われます。詩篇86篇の信仰をしっかりと心に刻み収穫の秋を迎えましょう。

・「わたしはあなたのいつくしみ生きる者。」

・「悩みの日に我を呼べ。われ、汝に答えん!」

・「御名を畏れ敬うことができるように、一筋の心をお与えください!」

 信仰一筋、神様の第一の真実な信仰生涯を全うしたいですね。ハレルヤ

 

【祈祷】 全能の父なる神。今日はあなたの恵みの中で詩篇86篇を学ぶことができて心から感謝いたします。多くの試練苦悩の中でうめきながら、ダビデも代々の聖徒も、神の御言葉と共に歩んできました。わたしどももこの詩篇86篇のように、御言葉を頼りつつ、信仰をもってこの日、立ち上がりたいと思います。どうか、「神様の慈しみに生きる者」としての認識を新しくしてください。あなたの愛の中で贖いの恵みを受け、あなたの民となったこと、試練のただ中であなたに叫び祈る者としてください。あなたの十字架と復活の奇跡の業を体験しつつ、「一筋の心」であなたに従うものとならせてください。わたしたちの救い主、主イエスの御名によって祈ります。アーメン