新宿西教会主日礼拝説教「罪のカタログ」ロマ書講解⑭ローマ人への手紙1:28~32 深谷春男牧師

2月20日(日)主日礼拝説教「罪のカタログ」ロマ書講解⑭

聖書箇所:ローマ人への手紙1:28~32 

説教者:深谷春男牧師

最近は、コロナの影響もあって、通信販売が増えてきまして、わたしのEメールにも、たくさん宣伝が入ってきます。いろんな種類のカタログが入ってきます。カメラのカタログ、古本屋さんのカタログ、キリスト教書店からも、年末には、クリスマスグッズ、赤や緑のろうそくや、可愛いキャラクターの人形、しおりとか、たくさんの商品が押し寄せてきます。 

【今日の聖書箇所の概略と構造】

さて、今日は、ローマ人への手紙の第1章の終わりとなりました。ある注解書を読みましたら、この箇所は、「罪のカタログ」と表題が載っていました。ロマ書一章は、以下のような構造になっています。 

 1‐17節  手紙の序文…自己紹介、福音紹介、訪問計画・主題の導入

18‐32節  本題に入る…神の怒りの啓示。知・情・意の堕落

  今回は、28-32節を通して、「意思の乱れ」すなわち、理性的堕落の具体的な指摘、ゆがんだ心と具体的悪徳の姿を学びます。18節から、パウロは本題に入りました。まず罪の指摘、そしてそこからの救いという構造になります。1:18-32は「異邦人の罪」という主題です。内村鑑三は3段にここを分類しています。( )は深谷の解説です。

第1段(19-23節)1悟性の乱れ(霊的堕落:偶像礼拝による霊的混乱)

第2段(24-27節)情性の乱れ(道徳的堕落:性倫理の混乱と倒錯)

第3段(28-32節)意思の乱れ(理性的堕落:歪んだ心と具体的悪徳)

 この第3段の「意思の乱れ」のところは「悪徳の表」といわれている部分で21の人間の悪徳が挙げられています。

 

【メッセージのポイント】

1)28 そして、彼らは神を認めることを正しいとしなかったので、神は彼らを正しからぬ思いにわたし、なすべからざる事をなすに任せられた。(28節)

 ⇒ 悪しき欲望や罪を野放しにするな!

この箇所で3回語られている、重要な言葉があります。それは「まかされた(パレードーケン)」です。この言葉は他の支配や力にまかせたという意味に使われ、聖書では「裁判にわたす」マタイ18:34、「死にわたす」マタイ17:22、「サタンにわたす」1コリント5:5、などと使用されています。

英国のアレキサンダー・ホワイトという説教者は生涯、人間の罪を見つめ続けることに徹しようとしておられたそうです。米国のジョナサンエドワードなども、人間の罪を深く見つめ、その説教を聴いた人々によって、深い悔い改めのうねりがリバイバルとなって現われました。人間の罪に対する深い認識を持つと共に、それらの罪や欲望を野放しにしてはいけません。欲望の川に流され、罪の赴くままなる生涯は、やがて、滝壺のような破局に直面せねばなりません。罪を侮ってはいけません。

 

2)29 すなわち、彼らは、あらゆる不義と悪と貪欲と悪意とにあふれ、ねたみと殺意と争いと詐欺と悪念とに満ち、また、ざん言する者、30 そしる者、神を憎む者、不遜な者、高慢な者、大言壮語する者、悪事をたくらむ者、親に逆らう者となり、31 無知、不誠実、無情、無慈悲な者となっている。 (29-31節)

 ⇒ 人間世界の罪の現実を知れ!(21の罪悪のカタログ)

この箇所は、「罪悪の目録」と言われる箇所です。この箇所以外に、「罪悪の目録」は、新約聖書では以下の3箇所に記されます。

  • マルコ7:21-22  主イエスの挙げた13種類の罪
  • ガラテヤ5:19-21 パウロが挙げた16種類の罪
  • ローマ1:28-31  パウロの挙げた21種類の罪

以下、ロマ書1:28-31の21の「罪悪の目録」を見てゆきたいと思いますが、ここはいろんな、区分の仕方がありますが、内村鑑三先生が、わかりやすく解説していてくださいますので、今回はそれに従いたいと思います。(英語はNKJV訳)

 

罪の総称 不義、all unrighteousness  罪の3つの総体 

1、悪  wickedness  = 人間の悪が外に現われたもの。

2、貪欲covetousness = 諸悪の根源、必要以上の欲求。

3、悪意   maliciousness= 心の中の悪毒、

以下はこの3つの罪を更に分解したもの。

第1類 嫉妬の罪

①ねたみ envy=人の持っている賜物を、うらやむ事

②殺意  murder=ねたみの究極、

  ③争い  strife=ねたみの結果、

④詐欺 deceit =ねたみの結果、人を欺くこと

⑤悪念 evil-mindedness =ねたみの結果、人の善をねたみ、他人の善の動機の中に悪を見ること

    植竹師の神学生時代の体験。主任が友人の高橋神学生をほめた時に、心の中に黒雲のようなねたみが起こる体験をした。

第2類 そしりの罪

①ざんげんする者 whisperers=人の背後で悪口を言うこと

②そしる者 backbiters=公然と悪口をいうこと

③神を憎む者  haters of God =そしりの罪の最高

あるいは― 神に憎まれる者よ! -というパウロの嘆息か。 

 ・ある兄弟の祈りの言葉。「わが口に門守を置いて、わが口の言

葉を守りたまえ」。口から一度出た言葉を消す消しゴムはない。

陰口、そしりの言葉は生涯、人は忘れない。

第3類 傲慢の罪

①不遜な者violent =人に向かって現われた傲慢、

②高慢な者 proud  =心の中の高ぶり、

③大言壮語する者boasters =高慢を口で表すこと、自慢、

④悪事をたくらむ者 inventors of evil things=終生、悪事をなそうとたくらむ者、

  ・夏目漱石の「こころ」。若い時に、おじさんに金銭を欺し取られ

世界には善人と悪人がいると思った。しかし、自分が成長してゆ

く中で、親友人のKと下宿のお嬢さんのことで三角関係になり、

Kを出し抜いて結婚。Kは失望して自殺。このことが生涯の心の

傷となる。明治天皇の死と共にこの小説の主人公は自殺する。こ

の小説の中で、人間はすべて罪を負っていることを漱石は語る。

第4類 不実の罪(誠実欠乏の罪)

①親に逆らう者=  disobedient to parents  親不孝、「孝は百行の基」という。

②無知undiscerning=不法とも訳せ、社会に対する誠実の欠乏、

③不誠実 untrustworthy=友人に対して約束を守らないこと、

  ④無情  unloving= 家族相互に対する不実、

  ⑤無慈悲な者  unmerciful=不人情、見知らぬ者への不実です。

わたしどもはこれらの罪の表を参考にしながら、自分自身の心の動き、行動を点検してゆきたいと思います。

 

3)32彼らは、こうした事を行う者どもが死に価するという神の定めをよく知りながら、自らそれを行うばかりではなく、それを行う者どもを是認さえしている。  (32節)

⇒ 罪を行うな、是認するな!

パウロは32節で、これらの行動は「死に値する」と言います。18節で、罪の中におちている異邦人社会の罪の部分を指摘してきました。これは、①偶像礼拝、②性的倒錯、そして③悪意に満ちたかたくなな世界を指して言っています。ソドムとゴモラのような世界を神は嫌われるのです。それをわたしどもは、是認してはなりません。是認すると言う言語は、英語で言えばsympathize(心を寄せる)、または agree with (同意する)と言う内容の言葉です。あの人もやっている、と是認することによって、おのれを罪意識からのがれるすべにしてしまいます。安易に罪を是認してはいけない、とパウロは教えます。           

 

4)「時は満ちた。神の国は近づいた.悔い改めて、福音を信ぜよ」

⇒ 神よ、わが心定まれり、わが心定まれり!   マルコ1:15

わたしどもはまず、聖書の言葉に照らして、自分の罪の現実を悟りましょう。そして悔い改めて、まことの神に立ち返り、へりくだって主イエスの十字架と復活の福音を心に受け入れましょう。そして、救いの証し人となりましょう。このキリストの贖いの愛こそが、イザヤ53章に語られる旧約の中心であり、ロマ書3:21~26に現れる福音です。福音に、心を定めましょう。木曜日の聖研・祈祷会で詩篇111と112篇を学びました。この2つの詩篇に「彼の義が永遠に立つ」との御言葉が4回出てくるのを見ました。「オメデト・ラアド」という言葉でびっくり。

 

5)22御霊の実は、愛、喜び、平和、寛容、慈愛、善意、忠実、23柔和、自制であってこれらを否定する律法はない。(ガラ5:22,23)  ⇒ 祝福のカタログをしっかり受け取ろう!

今日は、更に祝福のカタログを覚えつつ、新しい一週間を歩み続けましょう。この「御霊の実」は暗唱しましょう。ハレルヤ!

 

【祈祷】 全能の父なる御神。今日は、異邦人世界の罪の指摘の中の「罪のカタログ」を学びました。人間の罪は偶像礼拝と、性的混乱、全的堕落の中にある環境のただ中にあっても、わたしどもの身代わりとなり、贖いの代価をすべては支払って下さった主イエスの救いを心に受け、この「恵みの福音」を信じ、「呪いのカタログ」に変えて「祝福のカタログ」の言葉をたたえつつ、驚くべき恵みの世界を、この一週間も歩み行けますように導いてください。主イエスの御名によって。アーメン。