新宿西教会主日礼拝説教「マケドニア人の幻」使徒行伝16:1~10   深谷春男牧師

8月21日(日)主日礼拝説教「マケドニア人の幻」

聖書:使徒行伝16:1~10  

説教者:深谷春男牧師

 「美しい夢を見ることが出来なくなった時、その人は死んでいるのです。」と、アメリカのロバート・シューラー牧師が、日比谷公会堂で特別集会のチラシに書きました。シューラー先生は、その集会で、「信仰の夢」、「美しい夢」を持ちなさいと語られました。全能の神様に救われ、王の王、主の主なるイエス様の花嫁とされ、巨大な神の力の貯水池である聖霊なる神様を内側にいただくクリスチャンは、「若者は幻を見、老人は夢を見る」のですね。ハレルヤ!

【テキストの概略】 

この聖書箇所はどのようにヨーロッパに主イエスの福音が入って行ったかを示す、非常に興味深い箇所です。時は紀元50年前後。主イエスの十字架と復活に出会った弟子たちが、聖霊の力を受けて地中海地方で活発な伝道を繰り広げていた頃です。場所は小アジア地方、今のトルコの一角。パウロとシラスという聖霊に燃えた伝道者が登場します。

彼らは、第1回の伝道旅行(使徒13章-15章)の際に、パウロとバルナバの伝道によって建てあげた教会を見てきたいと思っての出発でした。彼らを支えた教会はアンテオケ教会でした。当時の地図を見ますと、地中海地方は、イタリアのローマ、エジプトのアレキサンドリア、そしてシリアのアンテオケが、3大都市を形成していたようです。シリアのアンテオケでの教会の活動か、使徒行伝13章に記されています。

彼らは陸路を選び、シリアからキリキアの峡門と言われる険しい地域を通って行きました。忠実なテモテがルステラでパウロにリクルートされ、良き働き人となりました。しかし、途中で、聖霊なる神がアジア州で御言葉を語ることを禁じられたので、フルギア・ガラテヤ地方を通って行きました。更にビテニア州に入ろうとしたら、それも許されず、彼らはアジアとヨーロッパとの境目、トロアスの地までやってきました。そこでパウロは有名な「マケドニア人の幻」を見ることとなったのです。

 

【メッセージのポイント】

1)9ここで夜、パウロは一つの幻を見た。一人のマケドニア人が立って、「マケドニアに渡ってきて、わたしたちを助けて下さい」と彼に、懇願するのであった。(9節)。

⇒ 歴史を作る幻は、暗い夜に与えられた。

 パウロはこの歴史的な幻を見る時、行きづまっていたようです。彼は聖霊にアジアで御言葉を語ることを禁じられてしまいました。ある意味では弟子のテモテを得て、御業はどんどん広がって行くかに見えた矢先

でした。パウロは宣教の使命に燃えて、小アジア地方更にはインドや中国の方面に伝道して行こうとしていたようです。しかし、聖霊なる神様はパウロの伝道のための計画を許されませんでした。聖霊なる神様はみ言葉を語るのを禁じられました。どのようなことが起こったのかは分かりません。ある人はパウロの病気が原因したのだといいます。ある人はその地方の宗教的指導者が宣教を許さなかったのだと言います。厳密な

意味での原因はわかりませんが、とにかくパウロは行き場を失い、ふらふらとさまようように小アジアのはずれトロアスにまで来てしまいました。彼が失意の中で暗いヘレスポントの海峡を見上げた時、彼は素晴ら

しい神様からの幻を見たのでした。一人のマケドニア人が立って「マケドニアに渡って来て、わたしたちを助けて下さい」とパウロに懇願しているのです。パウロはこの幻を見た時、これは神様の導きだと確信して、同行の数人とともにヘレスポント海峡を渡ったのでした。これがヨ-ロッパに福音が伝わった初めであると言われます。

 聖書はパウロは夜、幻を見たと書いています。この言葉は実に象徴的であると思います。夜は光がなく、行くべき道が見えません。それはパウロの心の状態を示しているように思えてなりません。パウロは行きづまりの中で神を見上げたのでした。神様はパウロに、宣教のみ業は人間の熱心によってではなく、神ご自身のみ旨によることを教えるために試練をお与えになったのでしょうか。おうおうにして人は自分の力に失望し、天を見上げる時から新しい人生に向かうことが多いと思います。

 聖書を改めて読んでまいりますと人生の行きづまりに神様に出会う人の多いのに気づくかされます。イスラエル民族の先祖になったヤコブの生涯などは実にその典型であると思います。40才の時、お兄さんが長子の特権をもっていることに不満を覚え、お父さんとお兄さんをだまして巨額な財産を奪います。その結果はたった一人の兄弟であるお兄さんのエサウに殺されそうになって異国の地に逃げて行かねばなりませんでした。彼が行きづまって冷たい石を枕に野宿をしている時、彼の生涯を決する『天のはしご』の夢を見るのです。地獄の一丁目のような所で、彼は天国の夢を見、神の声を聞いたのです。

 人間の行きづまりは神のチャンスであると言われます。人は自分の力に絶望して神の世界を見上げるのです。十字架は人間の律法による救いの獲得の行きづまりです。ただ主の一方的なあわれみによってわれらが救われることを最も雄弁に語っています。主イエスの復活は人間の知恵や努力の限界を示しています。人の救いは天から来るのです。神からまことの命の到来を語っています。

 いま、行きづまりを経験している方はいらっしゃらないでしょうか?恐れることはありません。それは神様からのチャンスです。天を見上げましょう。四方八方がふさがっても、天は開いています。

 

2)7そしてムシヤのあたりに来てからビテニヤに進んでゆこうとしたところイエスの御霊がこれを許さなかった。(7節)

  ⇒ 聖霊に導かれて行く時に、幻は与えられた。

 「幻は聖霊の言語」であるとある牧師は語りました。いつも徹夜の祈り会で共に祈っている青年は『幻は霊的なエネルギ-のかたまり』と名言を吐いたことがありました。普通、意志の伝達には言語が用いられます。しかし、聖霊なる神様は、時に幻を通してご自身の意志を伝達されます。しかも魂と言う陰画紙に鮮やかな映像を焼きつけるように・・。

 聖書の人物を見てゆきますと多くの人々は神からの夢や幻を与えられてその生涯が変化しているのをみることができます。

 信仰の父と言われたアブラハム。彼は『夜空の星』の幻を与えられて、「おまえの子孫はあの星の空のように多くなると言われました」。ヨセフはまさに『夢を見る人』でした。『束ねた麦の穂』の幻と『太陽と月と十一の星』の幻が神の不思議な摂理のみ手の中で実現してゆくのがヨセフ物語です。モ-セは『燃える柴の幻』を、イザヤは『神殿に満ちた主の裾』の幻、エレミヤの見た『煮えたつなべ』の幻、エゼキエルは『枯れた骨の谷』の幻、『神殿から流れる命の水』の幻を、・・・語り出したならそれは枚挙にいとまがありません。ペテロは『布に入った獣たち』の幻で異邦人伝道に新たな展開を見、パウロは『懇願するマケドニア人』の幻を見て、それがヨ-ロッパ伝道の端緒となったのでした。あのペンテコステの日にペテロがヨエルの言葉を引いて「若者は幻を見、老人は夢を見る」と語られたのです。ハレルヤ!

 

3)10パウロがこの幻を見た時、これは彼らに福音を伝えるために、神がわたしたちをお招きになったのだと確信して、わたしたちは、ただちにマケドニアに渡って行くことにした。(10節)

⇒ 彼らは幻を共有した。

10節から「われら資料」と言われる記事が始まります。9節までは三人称で「パウロは・・」とか「彼らは・・・」と語られた来たのですが、10節からは「われらは・・・」と言う表現に変わります。これは使徒行伝を書いた著者のルカがここからパウロ一行に加わった事を意味しています。ルカはここからは自分が実際に、このわたしが見聞きした体験を手記の形で記すと主張しているように見えます。多くの聖書

学者は、パウロが病気をしたのがきっかけで医者のルカとの出会いがあったのではないかと見ています。またパウロの見た幻の中のマケドニア人は、このルカではないかとも言っています。なにはともあれパウロの

伝道旅行に医者であり、詩人であり、画家でもあったという、優れた著述家ルカが加わりました。幻はパウロひとりが与えられたのですが、その幻に従って行動を共にする者達が起こされ、ついに福音はアジアからヨ-ロッパに伝わって行きました。ヨ-ロッパの最初の宣教地はピリピの町でした。この町はアレキサンダ-大王の父フィリップ王にちなんでつけられた名前だと言われます。それ以前はクレニデス(春の町)と

呼ばれていたとのことです。長い間、霊的な暗黒と、偶像と道徳的な腐敗の中にあっヨ-ロッパの氷ついたような混沌の世界に、まことの福音の『春の季節』がやってきました。わずかにパウロ、シラス、テモテ、

ルカの4人を載せた小さな小船の出発がヨ-ロッパ2000年のキリスト教歴史の初めだと誰が知りえたでしょうか?

 わたしたちも、今から、主からの幻を与えられて、大胆に出発して参りましょう。今週は「日本伝道の幻を語る会」がオンラインで、来週は「こころの友伝道全国大会」が、新宿西教会を会場に開かれます。

この所で、コロナや自然破壊や戦争の噂の困難の最中にあって、わたしたちは共に集まって主のリバイバルの幻を見るのです!  ハレルヤ

【祈祷】    全能の父なる御神。恵みの朝を感謝します。この朝は、パウロとシラスとテモテとルカの4人が、「マケドニア人の幻」を見、「マケドニアに渡ってわたしたちを助けて下さい」との叫びを聞いて、ヘレスポントの海峡を渡って、アジアのトロアスから、ヨーロッパのマケドニアヘと渡り、ピリピを拠点として、すばらしい宣教の業をなしていった、「ヨーロッパ宣教の春」の出来事を見ました。わたしどもは、いつでも、主イエス様の贖いの愛よって、罪赦され、神の子となる生涯へと導かれ、救いを求める方々に、主の救いの恵みを伝える使命に立ちます。今週には「日本伝道の幻を語る会」、来週には「こころの友伝道全国大会」を前に、あなたの御救いを再確認すると共に、救いを求める方々への、宣教の業に思いを寄せることができますように。日本の地にも、この新宿の地にも、主の福音を大胆に語り、救いの恵みを証しできますように、わたしたちに主の福音を多くの方々に伝える恵みの業をなさせて下さい。今日本は夜の時であり、光を求めています。聖霊様によりたのみつつ、幻をもって、宣教の業を進めて下さい。新宿歌舞伎町の町に、聖霊を下し、愛と救いの到来を証しさせて下さい。主イエス様の御名によって祈ります。アーメン