新宿西教会母の日主日礼拝説教「祖母ロイスと母ユニケ」Ⅱテモテ1:3~7深谷春男牧師

説教「祖母ロイスと母ユニケ」

聖書:Ⅱテモテ1:3~7

説教者:深谷春男牧師 

母の日の由来 

 1905年5月9日、米国マサチューセッツ州でアンナ・ジャービスさんの母親、クララ・ジャービスさん(彼女は教会のサンデースクールの教師として26年間奉仕しました)が亡くなりました。1908年5月10日、自分を苦労して育ててくれた母親の命日に近い日曜日に追悼の意を表し、教会で「亡き母をしのぶ」という花言葉の白いカーネーションをたくさんたむけ、母親を偲びました。彼女の行為に感動した、デパート王ジョン・ワナメーカー氏が自分のデパートで母の日を展開したことから全世界に広まったのでした。やがて1914年のアメリカ議会で、5月の第2日曜を「母の日」と定め、お母さんに感謝を現す日となりました。

  以前、スペインの画家ムリリョの描いた作品が日本に来たことがありました。「無原罪のお宿り」など感銘深く見ました、これは高校生のころ図書室で見て、感動したもののひとつでもありかした。カトリックの国のスペインでは「聖母マリヤ信仰」が根強いと言われます。やさしい母親の情愛をキリスト教信仰に反映させたものであろうと思います。母の愛と祈りは世界を変える!

 

【 聖書箇所の概略 】 

 今日の第二テモテはパウロの最後の手紙であると言われています。4章などを読みますと、パウロの最後の告白が出て来ます。「わたし自身は、既にいけにえとして献げられています。世を去る時が近づきました。 わたしは、戦いを立派に戦い抜き、決められた道を走りとおし、信仰を守り抜きました」(4:6-7)と語り、天に召される寸前であることが示唆されます。また3章2-5節などを見ますと、世の終わりの様相が記されています。「2 その時、人々は自分を愛する者、金を愛する者、大言壮語する者、高慢な者、神をそしる者、親に逆らう者、恩を知らぬ者、神聖を汚す者、3 無情な者、融和しない者、そしる者、無節制な者、粗暴な者、善を好まない者、4 裏切り者、乱暴者、高言をする者、神よりも快楽を愛する者・・・。現代の日本の混乱した世界のような姿が記されます。そして、3:16からは「聖書信仰」を教えています。今日は、この手紙の宛名になったテモテと、そのお母さんユニケ、そのお祖母ちゃんロイスのことを学んでみましょう。

【メッセージのポイント】

1)3 わたしは、日夜、祈の中で、絶えずあなたのことを思い出しては、きよい良心をもって先祖以来つかえている神に感謝している。4 わたしは、あなたの涙をおぼえており、あなたに会って喜びで満たされたいと、切に願っている。5 また、あなたがいだいている偽りのない信仰を思い起している。この信仰は、まずあなたの祖母ロイスとあなたの母ユニケとに宿ったものであったが、今あなたにも宿っていると、わたしは確信している。(3、5節)

⇒ 信仰の継承のために祈ろう!

 パウロの後継者、テモテの存在は教会の歴史の中ではたいへん大きい影響がありました。パウロはこの弟子テモテを自分の子供のように愛したようです。パウロはテモテの信仰の真実なすばらしいものであることを感謝していたが、その信仰の背後には真実に祈り続けた母のいること、また、その陰には、更に信仰深い祖母がいたことを見通しています。ユニケの生涯やロイスの生涯の詳細は、現代のわたしどもにとってあまりよくわかりません。しかし、彼女の真実な信仰はテモテのなかに受け継がれて、みごとに開花しました。そしてそれは、家庭の中で育まれてきた、深い信仰の継承でした。

現代、一番大きな問題のひとつは信仰の継承にあると、いたるところで語られます。「我が家とわれは主に仕えん」との決意を新たにし、この母の日に、わたしどもは、自分の「テモテ」のため祈り、思いを寄せましょう。

2)5 またあなたがいだいている偽りのない信仰を思い起している。(5節)

⇒ 偽りのない、真実な信仰を家庭の空気としよう!   

 また、パウロは続いて言います。「わたしはあなたにあって喜びで満たされたい。なぜなら、あなたの涙を覚えている」と。テモテは真実な、よく涙を流すような人物だったようです。彼は真実な心を持っていました。時には自分の弱さと醜さのために、涙を流すようなことも多かったに相違ありません。しかし、真実な、偽りのない信仰の心はすばらしい。その真実な一途な思いが、わたしたち救い主、主イエスの方に向くなら、それは純粋な美しい大輪の花を咲かせることでしょう。家庭のなかで継承できるのは「真実な、偽りのない信仰」なのです。真実な偽りのない信仰!教会の歴史を見ると、すばらしい人物の背後に、熱い涙を流して祈るお母さんがおられます。アウグスチヌスも、ジョン・ウエッスレーも、ウイリアム・ブースも、リンカーンも信仰の深い母親の熱い祈りと愛情に支えられて人生の基本をしっかりと学んだようです。母親のもつ感化力はたいへん強い。この世でお金や遺産を残さなくても、神様に真実に生きた「偽りのない信仰」を子孫に残したい。

3)6 こういうわけで、あなたに注意したい。わたしの按手によって内にいただいた神の賜物を、再び燃えたたせなさい。7 というのは、神がわたしたちに下さったのは、臆する霊ではなく、力と愛と慎みとの霊なのである。

⇒ 臆する霊ではなく力と愛と慎みの霊を!       (7節)

 また、パウロは「伝達すべき信仰は、臆病の霊であってはならない。力と愛と慎みとの霊である」と力強く語っています。これはわたしたちの信仰が、自分の力に頼るようなものではなく、聖霊なる神に導かれるべきものであることを明確に語ったものですね。わたしたちの家庭の中心に主イエスさまがいて下さる、聖霊なる神様がいてくださるとは何たる幸いなことでしょうか。女性は一般に弱いと言われます。しかし、昔からのことわざに言う「女は弱し、されど母は強し」とあります。母親が強いのは子供への愛と使命に生きるからです。愛は不可能を可能にします。聖霊は愛の霊、信仰の霊、いのちの霊です。母親の強さはこの聖霊にすべてを委ねて祈るところにあります。

自分の子孫にわれらは何を残すのか?わたしもユニケ、ロイスと共に「真実な信仰、聖霊に満たされた信仰」を家系の続くかぎり伝えたいです。

首都圏イースターで、御用をされた大嶋重徳先生が、救世軍の機関誌に載せた、「信仰継承10箇条」をご紹介します。先生はKGK(キリスト者学生会)という団体で働かれ、現在は牧師。先生の信仰はお母様に導かれながら歩んだ、幼いころからの家庭生活で育まれました。

《信仰継承10箇条》 ~おかんがつないだバトン~

夫婦は仲良く:母はいつもわたしたち3人の子供の間では夫をほめた。

「仕事ができる」。「かっこいい」。夫を愛し信頼する言葉に家庭を学んだ。

②、自分の信仰を自分の言葉で話す:母はある時、わたしたち子供の前で涙の悔い改めをした。親は子供に、自分の言葉でしっかり神を信じる信仰のことを伝えることが大切。親の救いの体験は子供の魂に明瞭に残る。

③、親父を乗り越えよ:僕は中学1年で明確な信仰を告白した。我が家は家族で元旦はお寺参りに行く。母は「お前は信仰の告白をしたんだからお父さんに、元旦は、教会の元旦礼拝に行かせて下さいと自分の生き方を伝えよ」と言われ、大晦日に、こわい父の前でポロポロ泣きながら「明日は教会の元旦礼拝に行かせて下さい」と言った。父は静かに「20歳になってから自分で決めたらどうか。今は、俺がお前を育ててんだから俺の言うことを聞くべきじゃないか」と言われ、ポロポロ泣きながら「でも、お父さん。僕が間違った信仰持ってるんだったら、叩いてでも良いから引きずり出して。僕のこの信仰を信頼して」と話した。父は「わかった。教会に行ってもいい」と赦してくれた。母は、「信仰は逃げてはいけない戦いがある。譲ってはいけない告白がある」と教えてくれた。父は後日、母に、「重徳が始めて俺に勝負してきた。俺はそれが嬉しかった」と話したとききました。

④、聖書の言葉を日常の中で語り合う:母はクリスチャンとして敬虔なタイプではなかった。しかしここで話さなくちゃいけないと言うときには聖書で勝負してきた。その母が、「家庭礼拝はじめる」という。わたしこれがいやだった。わたしも結婚してから夫婦セミナーにでたら、「家庭礼拝」をするという。妻がやりたいと始まりました。0歳と1歳の子供と一緒に布団の上でしました。5分間、楽しくやりました。この家庭礼拝を通して、家族で小さいときから聖書が我が家に入りました。

⑤、子供の問題に本気で向き合う:中学2年の時にこたつでミカンを食べていると、突然、母は「重徳、わたしなあ、お父さんだけやで」と言ってきた。びっくり。母を二度見た。当時ヤンキーだったわたしにも、ヤンキーの彼女がいました。「今付き合っている女の子いるやろ。もしそその子と体の関係を持っても、イエスさまの十字架で赦されることは知っているけどね、この子が神様を知らんかったら、あんたが地獄に落とすことになんねんで」。手にミカンを持ちつつ・・聞いた。でもこの言葉はこの先の人生を守ってくれた。妹の時も、同じようなことがあり、相手は、それから彼もクリスチャンになり、幸せな家庭を築いている。

⑥、家の手伝いをさせる:忙しい仕事を抱えていた母は、わたしの姉と妹で家事を受け持ちつつ、失敗を通しても、奉仕の楽しさを教えてくれた。

⑦、経済観念を育てる:神様に与えられたものを無駄にはしないこと。母は、経済生活を大切に教え、10分の1の献金は必ずし、そのように、教えてくれた。

⑧、誇りをもって仕事をする:母は教師として働いていた。わたしたちも受験や部活のことがあったが、教会に行かんでいい」とは言わない。「ちゃんと礼拝に出て、何のための人生か、確認するんじゃ」と言われた。

⑨、夫が信仰を持つことを大切にする:母は父の救いのために祈り続け、3年前に洗礼を受けました。47年間かかりました。父は拒み続けましたが母は諦めません。愛は諦めないことです。お葬式の司式は私がします。

⑩、祈り:母は毎日熱心に祈る人ではありませんでしたが、ここぞと言うときには、すごい祈り込みをする人でした。母の昔の日記には、「1月10日。今日は重徳のセンター試験。主よ、今10時です。英語が始まります。助けてください。」「化学は玉砕したそうです。高慢にならないよう、彼には必要なことです。」信仰の継承は、祈りですね。

【 祈り 】 天の父なる神様。「母の日礼拝」を感謝します。今日は聖書から、母親の姿を学ばせて頂きました。ユニケのように、ロイスのように、大嶋先生のお母様のように。母親を豊かに愛と信仰で満たし、日本の家庭を、祝し導いて下さい。主イエス様の御名によってお祈りします。アーメン